no.3 スピーチの真のミッション。

◆スピーチには真のミッションがある。

スピーチは依頼されるもの、という前提で話を進めます。

依頼されるものと考えると、「何のためにスピーチをするのか」を客観的に捉えやすくなるからです。

客観性をもたせるためにも、有効な考え方だと思います。

また実際に依頼されるケースの方が多いのではないでしょうか。

依頼主は、特定の個人だったり、組織での役職者だったり、人ではなく仕組みだったり、もしかしたら自分自身だったりするかもしれません。

(自分自身で依頼するというのも変ですが、自身の判断で必要だと思うから自分に話をさせよう、という感覚です。)

「依頼される」というところをスタート地点にすると、比較的スピーチの理解が深まりやすいと思います。

*この前提以外のスピーチについては、また改めて書こうと。今のところ思っています。

この前提で「何のためにスピーチをするのか」をスピーチの真のミッションと捉えておきます。

・なぜこのスピーチを依頼されたのか。
・なぜ私に依頼したのか。
・スピーチをすることで、どんな結果を求めるのか。

ここでは、上記の3つの視点から掘り下げていきたいと思います。

◆依頼されてスピーチをするということは、「誰か」の思いがある。

そもそも、人はなぜ「話す」のでしょうか。

答えはただ一つです。
誰かに伝えたいことがあるから。

小さな子供も、お母さんに何かを伝えたいから、伝えたいことがあるから話すわけですよね。

言葉が拙い分、身振り手振りを交えて一所懸命「伝えよう」とします。

犬だって意図があって吠えているような気がします。

「伝える」という目的は、言葉に与えられた唯一の性と言っても過言ではないような気すらしてきます。

ちょっと哲学めいたことを言ってみました。

言語の価値については、プロフェッショナルにはかないませんのでここで逃亡することにします。

それはさておき、スピーチの場合は依頼主がいることがほとんどです。

依頼主がいるということは、その人(組織や団体)にとって、スピーチが必要だからです。

スピーチで何かを伝えてほしいから・・・・

これが、「誰か」の思いです。

私達のスピーチで「伝えるべきこと」になります。

自分以外の誰かの口を使って「伝えたいこと」を「伝えよう」とするのだからややこしい。

自分でやれば良いのに。

と思いますが、依頼する理由があってのことだと理解しておきましょう。

前回のスピーチ例から紐解いてみる

YEG(商工会議所青年部)の定例会におけるひとコマ「事業報告」です。

(前回の記事はこちら)

…○月○日に、△△△△で他団体との交流イベントが開催されました。

当日は80名ほどの参加をいただき、イベント自体も盛況でした。

ご参加頂いた皆様、また準備や当日のお手伝いなどでご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

続きまして、来月の○日にはミーティングを予定……

まず、言葉の表層から読み取れる「伝えるべきこと」を整理していきます。

・○月○日に交流イベントがあり、80名の参加者があったという事実。
・参加者協力者へのお礼という感情。
・来月ミーティングを予定しているという事実。

この3つでしょうか。

これは、この交流イベントを実施した事実。

確かに「伝えるべきこと」ですが、これだけなら書面で事足ります。

わざわざ人前に姿を晒してまでスピーチをするからには、事業報告を求めている「依頼主の思い」があるのだろうと仮定してみましょう。

定例会で事業報告の機会を設定した人は誰?

・イベントの担当委員会の委員長
・定例会を運営する委員会の委員長
・YEGメンバー(組織としての意図)
・会長や執行部

まず、定例会で事業報告の機会を設定した人は誰ですか?

誰でしょう。
誰ですか?

皆さんの所属する会や会社によっていろんな人が考えられるのですが。
(例によって、あなたの所属する組織に置換して考えてくださいね)

その人にとっての、事業報告を通して伝えてほしいことがあるはずです。
依頼主の思い=あなたが伝えるべきことです。

そもそも、あなたが必要だと思っていないところへスピーチを依頼されるのです。

依頼主の意向を聞いてみないことにはさっぱりわかりません。

なので、まずは一番手っ取り早い方法を取ることにします。

「事業報告って、何のためにするんですか?」

このまま言ってみてください。

まず、睨まれるか苦笑いされるか、はたまたキョトンとされるか。

良くても「共有しておきたい」という答えがかえってくるかでしょう。

ちゃんと、前後を説明しないとだめですね。

「委員長ならそのくらいわかっておけよ。」

そんな会長の心の声が聞こえてきそうです。

ですが、そう言われてもわからないものはわからないですからね。

「推測はしますけど、私はあなたじゃないので」という心の声を抑えて、ここは丁寧にその先へ一歩踏み込んで聞いてみることにします。

そうすると

「情報を共有して、メンバーみんなにも参加してもらいたいんだよね。だって、委員会だけの事業じゃないじゃん。全体で盛り上げていきたいと思ってさ」

「担当じゃないみんなにも、自分ごとにして一緒に考えて欲しいから。そのためには背景とか、今どうなっているとか、そういうの知らないとだめじゃん?」

とか、そういう答えが期待できるかもしれません。

事業報告を通して伝えたいこと、その次に期待するものがあったりします。

ここでは「次の事業に、なんらかの形で良いからたくさんの人に関わってもらいたい」ということにします。

スピーチとなると、つい「話し方」とか「話す原稿」みたいなものから考え始めてしまうことが多いようです。

うっかりすると自分の言いたいことばかりを並べてしまうかもしれません。

まずは、この「伝えるべきこと」をしっかり捉えることが、本当に大切な一歩目なのです。

◆なんで「わたし」なのか?

スピーチを依頼されるということは、

誰かの思いがあって

それを私というフィルターを通して

聞き手に伝えるということ。

なぜ、スピーチというお役目がわたしに与えられたのか?

どんな理由だと思いますか?

・スピーチが上手だから。
・役職についているから。
・担当者だから。
・成長させたいから。
・いじわる?

なぜでしょう。

そんなの自分で話せばいいじゃん。

と思うこともありませんか?

その時々で理由は様々だと思いますが

つまるところ「誰が言ったか」が大事だから。じゃないでしょうか。

同じ内容でも、伝える人が違うと感じ方が違うことありますよね。

「誰が言ったか」は信頼性が関わってきます。

信頼性は大きく3つ。

1つ目は専門知識という信頼

例えば専門家のコメントとか。

問題の解決に携わってきた経験があるという権威(=信頼)が言葉に重みを与えてくれます。

「あの人が言うんだから、きっとそうなんだよね」

という感覚。

YEGだと、特定の業種の人に意見を聞くことないですか?

○○業の人だから詳しい、みたいな。

あなたにしか伝えられない情報や考え方がある。それが専門性です。

もうひとつは熱意という信頼。

「担当しているからこそ、その事業にかける「思い」があるはず」

依頼者からすれば、それを乗せて話をして欲しいということです。

たとえ言葉がうまく出てこなくても、その情熱を言葉に乗せることで気持ちは伝わる。

わたしは、人前で話をする上で最も大切な部分だと思っています。

「依頼者の伝えたいこと=伝えるべきこと」をしっかり伝えることが大切と言いましが、それを表現するためになぜ私が選ばれているのか。何かを期待されている部分です。

情熱や熱意が乗せられた言葉は、「伝えるべきこと」が「伝えたいこと」になってきます。

「会長に言えと指示されたので話す」では、だれもわたしの話しに耳を傾けてくれません。「今から話すことに関しては、私が世界一情熱を燃やしている」くらいの思いを持って話すからこそ、「私が伝えたいこと」だからこそ、人は関心を持って聞いてくれるということです。

最後にスピーチがうまいという信頼。

料理がうまい人に料理のことを任せる。という感覚だと思います。

担当者は何人もいるけど、そのなかで一番的確に伝えたいことが伝わる人を選ぶ。

大きなイベントでは、この傾向がより強くなるかもしれないですね。だって失敗したくないですもん。

なんでかと言うと、大きなイベントでは人数が多かったり普段の交流が薄い人がいたりするので、伝わらなかった場合にリカバリーが難しいからです。

「思いをのせて伝えたいことをしっかり伝えきる」

そのために、スキルは大切です。

基本的には、この3つの信頼が人選の決め手になりますね。私が依頼者になるときはだいたいそうです。

無意識のうちにやってることも多いかもしれないですね。

◆スピーチをきっかけに、行動してもらいたいこと

「伝えるべきこと」「なぜわたしなのか」がわかったところで、その先を考えてみます。

その先?

それは、スピーチを聞いたあと聞き手がどう行動するか。

です。

これが見えてこないと、スピーチを組み立てるのが面倒くさいです。

だから依頼者に聞きます。直接聞けなかったら、周りの先輩や仲間に問いかけます。

それでも明確にならなければ、自問自答の世界に潜り込みます。推測して読み取るわけです。

ですが、ホント面倒のでしっかり聞き出したいところです。

自分自身で掘り下げて意味を見出して、それに沿ったスピーチをひねり出して当日になって答え合わせをする。

ハラハラドキドキです。勘弁してください。

先程の事業報告では、とりあえず明確になりました。

今後のイベントに「参加してもらう」という行動でしたね。

あとは、「参加してもらう」に向かってストーリーを展開するだけですが、事業報告を聞いた人が次のイベントに参加するようになるにはどうしたら良いでしょう?

今、パッと思い浮かぶ方法はいくつありますか?

1.参加してくださいとお願いする。
2.参加してほしいと言われていると白状する。
3.参加したくなるように誘導する。
4.参加しろと脅す。

さすがに4は無いだろうと思いますけど、実際これをやる人もいて、それでもその人は人気者です。

素直にスゴイと思います。

逆立ちしたって、私には出来そうにありません。普通に嫌われます。

どれを選ぶかは皆さんの自由です。

正解はありませんので、極論を言ってしまえば次回のイベントの参加者が増えれば何でも良いわけです。

あなたなら、どんなスピーチを構成しますか?

◆正確に行動に導くには?

感情→行動のステップを聞いたことがありますか?

まずは「感じる」からはじまる。

「感じる」は「思う」になって、

「思う」は「考える」になり、

そして最後に

「考える」から「行動にする」に至る。

私も教えてもらった話ですので、深く解説するのは憚られますが、私なりの解釈で当てはめていきたいと思います。

行動というのは、はっきりしています。「次の事業に参加する」ですね。

考えるというのは、参加することのメリットやデメリットや日程など、行動することに対しての「論理的な思考」と捉えてみます。

思うというのは、参加してみたいとか、参加しても良いなとかそういった感情でしょうか。

で、感じるというのは?

私が思うに、言葉にならないくらいの「感情」なんじゃないかと思います。

スピーチを聞いて、何かを感じ取る。

「行動する」や「考える」は、個々に実行されることなので、スピーチではどうにもなりません。そのあたりは説得か命令です。私達がスピーチで触れることが出来るのは、その入り口にある「感じる」と「思う」という感情の部分だけです。

なので、聞き手の感情を揺さぶって参加してみたいという気持ちへの誘導・・・

長い道のりでしたが、これこそがこのスピーチの伝えるべき「何か」ということになります。

もうね、こんなステップで毎回掘り下げてたら大変です。

私も毎回はやりません。定例会の事業報告なんて毎月のことですから、はっきり言って嫌です。

先程の方法のうち「3.参加したくなるように誘導する」を選択したから、こんな面倒なことになってしまうんですよ。

だから、ほとんどの人は「1.参加してくださいとお願いする」を選んでいるのだと思います。

でも、それでは一向にスピーチが上達しないので、誘導を目的としてトークを組み立てていくことにしましょう。

面倒くさそうです?

でも大丈夫。

一度慣れてしまえば、そうですね5分程度のスピーチなら反射的に気づきますし、組み立てられるようになります。

直感というやつです。

「スピーチのコツは慣れと直感です。がんばりましょう」

これじゃ記事にならないしサイトの意味がなくなってしまう。

だからちゃんと書きます。

しっかりと理論をわかっていれば、どんな時でも何回でも再現出来るようになる。

これがすごく大事なことです。

感性や感覚だけでスピーチが上手い人って教えられないの、だいたい。

ムラも多いし。

ちゃんとわかって出来るようになっておけば、最低レベル以上は必ずこなせるようになる=安定する。

これです。

さて、話を戻します。

「参加する」という「行動」をしてもらうためには、どんな感情を持ってもらえれば良いのか?

でしたね。

これから書きながら考えていきますので、私もまだ答えがありません。

違う例文を使うつもりだったもんだから、用意してないんですよ。

この記事の終わりでに答えが出るといいな。一緒に考えましょう。

とりあえず「思う」を推理してみましょう。

「思う」の主語は「聞き手が」ですので、あくまでも誘導した先のことですから、推理。

・楽しそうだな。
・勉強になるかもな。
・大変そうだな。
・頑張れば仕事とれるかもな。
・仲良くなれるかな。
・つまらなそうだな。

どうでしょうか?
スピーチを聞いた人が「思う」だろうことをテキトーに書き出しました。

この中で、ネガティブな部分を掘り下げてもしょうがないですから、とりあえずはポジティブな「思う」を引き出すことを考えてみます。全部は大変なので、「楽しそうだな」にしておきましょうか。

さて、どうやって引き出します?

私の先輩に、これを引き出すのがとっても上手な人がいるんです。

本職は葬儀屋さんなので、真逆の感情の中で司会をやってるはずなんですが。

つい乗せられちゃうんですよ。

「もうめちゃくちゃおもしろいんですよ」

「いや、みなさんがどう感じるかはわかんないですけどね。僕はめっちゃくちゃ楽しかった。あのね、イベントの準備の時なんだけどさぁ・・・あ、ごめんなさい。時間ないのであとで飲み屋かどっかで話しましょう。報告は以上です。」

報告が異常ですよ。

「楽しい」って明言しちゃってるわりに、僕だけの感情ってことで突き放しちゃってるんです。

自分の思い出を語りだしちゃうわりに、途中でやめるし。

狙ってやってるのか、天性なのかはわかりませんが、見事に感情を揺さぶってると思います。

こんなやり方もあるんだなあ。ある程度お互いの人柄を知っているからこそ出来る芸当だとは思います。

初対面や硬い空気の中では難しいかもしれませんが、日頃の関係性をしっかり活かした揺さぶり方とも言えます。

いま、感情を揺さぶるって言いました。

そうなんですよ。

揺さぶる。

だから、気持ちがブルっとなれば何でも良いってことです。そのあと、どう「思う」のかは聞く人の勝手。

そう考えると、脅すってのも揺さぶるって意味では正しい選択なのか。そのあとの結果は知りませんけど。

ポイントを整理してみます。

楽しい、良いという表現の主語を自分にしている。
(押し付け感がなくて、サラッと入ってきます)

自分を主語にして、楽しかったという感情だけを伝えようとしている。
(楽しい以外のことを伝えるのをバッサリ。シンプルだからわかりやすい)


気になりだしたところでやめる。
(まぁ、途中でやめたのは「今じゃない」って気づいてやめたみたいですけど。)

飲みに行こうよって誘いを入れながら、プライベートで語っちゃうくらい楽しいをアピールしている。
(もしかしたらそこで参加するように口説く気だったりして)

今の人間関係やキャラクターを最大限に活かしている。
(誰でも真似できるトークじゃないけど、使えるものは使い切るって姿勢がカッコいいです。)

今回は、例がハードル高かったです。事業報告でここまでやること、あんまり無いわ。

良い先輩がいてくれて助かった。

◆真のミッション

スピーチの真のミッションとは

・依頼者の伝えるべきこと。

・私が伝えたいこと。

・スピーチに求める結果。

でした。

これをしっかりと整理してしまえば、やればやっただけ上達していきます。

他の人のスピーチを聞くだけで、上達します。

なんでかって?

聞きながら整理が出来るようになるから。

真のミッションは「何のためにスピーチをするのか」の延長にあるものです。わざわざ2回に渡ってお伝えしてきました。長かった。書くよりも話すほうが楽なわたしには大変な道のりです。

でも、それでも書きたかったのには理由があります。

真のミッションがわからないままスピーチがうまくなりたい、という人がめっちゃ多いから。

ここが、スピーチとかプレゼンとか挨拶もそうだけど、ここが一番大切なとこだから。

慣れるまではちょと大変かもしれないですね。

わたしはホント時間かかりました。

自分なりにフォーマットというかテンプレートというか型みたいなものを考えて、いろいろ修正して。

もっと早いうちに、本を読むなりして勉強しておけば良かった。そしたら苦労しなくてよかったのに。

でもまぁ今はもう慣れちゃったので、3分スピーチくらいならなんとでもなります。

真のミッションを捉えるのが早いから。

次回は、、真のミッションの実例とスピーチの構成の仕方について触れていきます。

今回はこれにて。

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